【獣医師監修】犬・猫のノミ・マダニとは?症状・感染症リスクから予防法まで徹底解説

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ハーネスをつけてお散歩する犬

「最近うちの子、やたら体をかきむしるんです」「お散歩から帰ったら、黒い小さなブツブツがついていて……」——あたたかい季節になると、こうしたご相談で来院される飼い主様がぐっと増えます。その正体の多くが、ノミやマダニです。

ノミ・マダニは「かゆいだけ」と思われがちですが、実は重い皮膚炎やさまざまな感染症の入り口にもなる、油断できない寄生虫です。この記事では、ノミ・マダニがもたらす症状や感染症のリスク、寄生に気づくサイン、そして毎月の予防の大切さまでを、わかりやすくお伝えします。

ノミ・マダニとはどんな寄生虫?

ノミは体長1〜3mmほどの小さな昆虫で、犬や猫の皮膚に寄生して血を吸います。気温13℃以上で繁殖が活発になり、1匹のメスが1日に数十個もの卵を産むため、放っておくとあっという間に増えてしまいます。暖房の効いた室内では、冬でも生き延びることがあります。

マダニはクモの仲間で、吸血前は数mm、たっぷり血を吸うと小豆ほどの大きさにふくらみます。草むらや公園の茂みに潜み、通りかかった犬や猫に飛び移って皮膚にしっかりと噛みつきます。春から秋にかけて特に活動が盛んですが、近年は地域によって通年で注意が必要です。

ノミのライフサイクル

ノミのライフサイクル

ノミは、わずかな期間でどんどん数を増やしていきます。草むらなどにいるノミの成虫が犬や猫に寄生して血を吸い、そのまま体の上で産卵します。産み落とされた卵は、お部屋の床やカーペットなど家のあちこちに散らばって落ちていきます。

落ちた卵からは幼虫がかえり、暗くて湿った場所に潜みながらホコリや有機物を食べて育ちます。やがて繭(まゆ)をつくってさなぎになり、その中で成虫へと姿を変える準備を進めます。そして繭から出てきた成虫がふたたび犬や猫に飛び移って吸血する——このサイクルが、すごいスピードでくり返されていくのです。

ここで大切なのは、ペットの体の上にいる目に見えるノミの成虫は、ライフサイクル全体のわずか約5%にすぎないという点です。残りの約95%は、卵・幼虫・さなぎの状態で、お部屋の床やカーペットなどおうちの環境に潜んでいるといわれています。そのため、ペットの体にいる成虫だけを駆除しても、環境に残った卵や幼虫から次々と新しい成虫がわいてきてしまいます。ペットと環境の両方の対策が、ノミ退治のカギになります。

マダニのライフサイクル

マダニのライフサイクル

マダニは、成長の段階ごとに別の動物へ乗り移りながら吸血をくり返すのが特徴です。

卵からかえったばかりのマダニは、草の先端や葉の上でじっと待ち構え、動物が通りかかると振動や体温などを感じ取って乗り移り、血を吸います。お腹いっぱい吸血すると動物から地面に落ち、脱皮してひとまわり大きく成長します。そしてまた別の動物に乗り移って吸血し、落ちて脱皮する——マダニは、こうして「幼ダニ」「若ダニ」「成ダニ」と姿を変えながら、合計で三度ほど宿主を乗り換えて成長していきます。

最後にしっかり吸血して成熟したメスは、なんと3,000〜4,000個もの卵を産むといわれています。お散歩のたびに乗り移られるおそれがあるうえ、一度に産む卵の数も非常に多いため、草むらに近づけない工夫と、お散歩のあとのこまめなチェックがとても重要です。

こんなサインに注意

次のような様子が見られたら、ノミ・マダニが寄生しているかもしれません。

  • しきりに体をかく、噛む、なめる
  • 毛をかき分けると、黒い砂粒のようなフン(ノミの糞)が見える
  • 皮膚に赤いブツブツやかさぶた、脱毛がある
  • 体の表面に、いぼのような小さなふくらみ(吸血中のマダニ)がある
  • 元気や食欲が落ちている

特にマダニは、首まわりや耳、目のまわり、内ももなど、皮膚のやわらかい部分に付きやすい傾向があります。

放っておくと怖い理由

ノミ・マダニは、ただかゆいだけではありません。

  • アレルギー性皮膚炎:ノミの唾液に反応して、強いかゆみや皮膚炎を起こすことがあります。
  • 貧血:大量に寄生すると、特に子犬・子猫では吸血により貧血になることもあります。
  • 瓜実条虫(うりざねじょうちゅう):ノミを口にすることで、お腹の中に寄生虫がうつることがあります。
  • マダニ媒介の感染症:マダニは、命に関わる病気を運ぶことがあります。なかでもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、犬や猫だけでなく、人にも感染しうる重要な病気として知られています。

「たかがノミ・マダニ」と侮らず、しっかり予防してあげることがとても大切です。

予防のポイント

ノミ・マダニ対策では、まずそもそも寄生に出会わせないことと、万一寄生されても被害を最小限に抑えることの両方が大切です。

  • 生活環境を清潔に保つ:寝床やカーペットをこまめに掃除し、洗えるものは洗濯しましょう。ノミの卵や幼虫は、室内のすき間にも潜んでいます。
  • 草むらに長く入らせない:お散歩のときは、茂みや背の高い草の中をできるだけ避けると、マダニに出会うリスクを減らせます。
  • 予防薬を定期的に使う:背中に垂らすスポットタイプ、おやつのような飲み薬タイプなどがあります。効果が続く期間が決まっているため、シーズン中は毎月、忘れずに続けることが大切です。

ここで知っておいていただきたいのが、「予防薬」という名前ではありますが、ノミやマダニが近寄るのを完全に防ぐバリアのような薬ではない、ということです。多くの予防薬は、ノミ・マダニが動物の体に寄生して吸血したときに、血液中の駆虫成分が寄生虫の体内に取り込まれることで効果を発揮します。つまり厳密には「寄生そのものをゼロにする薬」ではなく、寄生されてしまったときに、被害が広がる前に駆除してくれる“最後の砦”なのです。

だからこそ、お散歩の工夫や環境の清潔さといった日々の対策と、予防薬を組み合わせることが重要になります。そして予防薬の効果を切らさないために、シーズン中は毎月忘れず続けることが、結果として愛犬・愛猫をしっかり守ることにつながります。

なお、予防薬は動物の種類・体重・年齢によって適したものが異なります。猫に犬用の薬を使うと危険な場合もあるため、必ず動物病院でその子に合ったものを選んでもらいましょう。多頭飼いの場合は、1匹だけ対策してもほかの子から再びうつってしまうため、同居している犬・猫はみんなで一緒に続けることをおすすめします。

受診の目安

次のようなときは、早めに動物病院へご相談ください。

  • マダニが噛みついているのを見つけた
  • かゆみや皮膚炎が続いている、悪化している
  • 元気や食欲がない、ぐったりしている

特に、マダニを見つけても無理に引き抜こうとしないでください。口の部分が皮膚に残って炎症を起こしたり、つぶすことで病原体が広がったりするおそれがあります。動物病院で安全に取り除くのが安心です。

まとめ

ノミ・マダニは、かゆみだけでなく皮膚炎や感染症の原因にもなる、油断できない寄生虫です。大切なのは「寄生させない」予防で、シーズン中は毎月の予防薬を続けることがいちばんの近道です。愛犬・愛猫が一年を通して快適に過ごせるよう、早めの対策を心がけましょう。


ノミ・マダニは、正しい予防でしっかり防ぐことができます。そして万が一寄生されてしまったときも、早めの対応が愛犬・愛猫の健康を守ります。心配なこと、気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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