2025/09/25
「うちの子の皮膚に赤いブツブツが出てきた」「かゆがって掻きむしっている」「フケやかさぶたが増えてきた」
そんなときに考えられる病気のひとつが膿皮症です。
膿皮症は犬で最もよくみられる皮膚病のひとつで、細菌の異常増殖によって発症します。繰り返すことも多く、そのままにしておくと重症化する場合もあるため、早めの対処がとても大切です。
この記事では犬の膿皮症の原因・症状・診断・治療・予防法まで、飼い主さんに知っていただきたいポイントをわかりやすく解説します。
膿皮症とは?犬でよく見られる皮膚病
膿皮症は、犬の皮膚に常在するブドウ球菌という細菌が異常に増えて炎症を起こす病気です。健康な犬の皮膚にもブドウ球菌は存在しますが、皮膚のバリア機能が弱ったときや生活環境(高温多湿)の影響をうけ増殖しやすく、赤みや膿を伴う皮膚トラブルを引き起こします。
特に犬は皮膚が薄く、皮脂腺や毛穴が多い構造のため、人よりも細菌感染を起こしやすい動物です。
膿皮症は感染の深さにより以下の3種類に分けられます。
・表面性膿皮症:皮膚の角質層を中心とした浅い部分に発生する膿皮症。
・表在性(浅在性)膿皮症:毛穴や表皮の内側まで感染。赤み・膿疱・脱毛・フケなどが出る。犬の膿皮症の多くがこのタイプ。
・深在性膿皮症:皮膚の深い層まで感染。痛みや潰瘍、出血を伴い、発熱など全身症状が出ることもある。
膿皮症の主な原因
膿皮症は「何らかの基礎疾患や環境要因により皮膚のバリア機能が低下して、ブドウ球菌が過剰に増殖すること」により発症します。
主な基礎疾患や環境要因としては
・皮膚炎(犬アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏症など)
・ホルモン疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など)
・犬種の特徴(しわの多い犬種:シーズー、パグ、フレンチブルドッグなど)
・免疫力低下(幼犬・高齢犬・他疾患による体力低下など)
・その他(気候、不適切なスキンケアなど)
が挙げられます。
膿皮症の症状
・かゆみ
・赤い発疹(紅斑)
・うみを持つブツブツ(膿疱)
・脱毛
・フケやかさぶた
などがあります。
膿皮症の診断と検査
当院では以下のような検査を行い診断します。
皮膚細胞診(押捺検査):膿疱から採取したサンプルを顕微鏡で確認し、ブドウ球菌や炎症細胞をチェックします。
細菌培養・薬剤感受性試験:再発や治りにくい場合に実施。どの抗生物質が効くかを調べ、耐性菌の有無も確認します。
膿皮症の治療
膿皮症の治療は「原因菌に対する治療」と「基礎疾患や環境要因への対応」の両輪が必要です。
原因菌に対する治療
・抗菌薬の全身療法(内服)
・抗菌薬や消毒薬の外用療法
基礎疾患や環境要因への対応
・皮膚炎やホルモン疾患の治療
・犬種特有のしわのケア
・生活習慣やスキンケア方法の見直し
再発予防のためにできること
膿皮症は再発を繰り返すことが多い病気です。予防のために飼い主さんができることを紹介します。
・個々の皮膚の状況にあったシャンプーの使用
・基礎疾患や環境要因への配慮
・皮膚のしわや耳の奥を清潔に保つ
当院ではトリミングも行っており、獣医師の指導のもとで薬用シャンプーを使用したトリミングが可能です。ご家庭でのケアが難しい場合や、シャンプーの仕方に不安がある飼い主様も安心してご利用いただけます。
最後に
犬の膿皮症はよくある皮膚病ですが、放置すると悪化や再発を繰り返す厄介な病気です。
「ちょっと皮膚が赤いだけ」と思っているうちに広がり、治療が長期化するケースも少なくありません。
愛犬の皮膚に赤み・膿疱・かさぶた・脱毛などの異変を見つけたら、できるだけ早く当院にご相談ください。