2025/10/09
「鼻の頭に赤いかさぶたができて、しきりにかゆがるんです」「夏になると毎年、耳の先がただれてしまって……」——あたたかい季節になると、こうしたご相談で来院される猫の飼い主様が増えてきます。その原因のひとつが、蚊アレルギー(蚊刺咬性過敏症)です。
「猫が蚊で皮膚炎に?」と意外に思われるかもしれませんが、実は珍しくない病気です。この記事では、そもそも猫は蚊に刺されるのか、刺されるとどうなるのか、症状や原因、ご家庭でできる予防までを、わかりやすくお伝えします。
そもそも猫は蚊に刺されるの?
はい、猫も蚊に刺されます。人と同じように、蚊は猫の血も吸います。ただし全身が毛におおわれているため、刺されやすいのは毛がうすい部分——具体的には鼻すじ(鼻の頭)・耳の先・目のまわり・肉球などです。
多くの猫は、刺されても少し腫れる程度で自然に治まります。問題になるのは、蚊の唾液に含まれるタンパク質に対してアレルギー反応を起こしてしまう子です。これが蚊アレルギー(蚊刺咬性過敏症)で、刺された部分に強い皮膚炎が出てしまいます。
「うちは完全室内飼いだから大丈夫」と思われがちですが、蚊は網戸のすき間や人の出入りといっしょに室内へ入ってきます。室内飼いの猫でも発症することがあるため、油断はできません。
猫の蚊アレルギー(蚊刺咬性過敏症)とは
蚊アレルギーは、正式には「蚊刺咬性過敏症(ぶんしこうせいかびんしょう)」と呼ばれる、猫に特徴的なアレルギー性の皮膚炎です。
蚊に刺されること自体ではなく、蚊の唾液に対して体が過剰に反応してしまうことで起こります。そのため、刺された回数が増えるほど反応が強く出やすくなる傾向があります。蚊の活動が活発になる春から秋にかけて発症・悪化し、毎年くり返すのが典型的なパターンです。
こんなサインに注意(症状)
次のような様子が見られたら、蚊アレルギーかもしれません。
- 鼻すじや耳、赤いブツブツ・かさぶた・脱毛ができる
- かさぶたの下がただれたり、じくじくしたりする
- 患部をしきりにかく、こすりつける
- 肉球が腫れる

「刺された跡」の見分け方としては、ふつうの虫刺されは数日でおさまるのに対し、蚊アレルギーでは毛のうすい場所に左右そろって症状が出る・かさぶたがなかなか治らない・毎年同じ季節にくり返すといった特徴があります。見た目だけでは皮膚の腫瘍やほかの皮膚病と区別がつきにくいこともあるため、気になる変化は写真に撮っておくと診察に役立ちます。
主な原因
原因は、蚊の唾液に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応です。蚊が吸血するときに注入される唾液成分に体が過敏に反応し、刺された部分に炎症が起こります。
体質的になりやすい子がいる一方で、刺される機会が多いほど発症・悪化しやすくなります。屋外に出る猫はもちろん、前述のとおり室内の猫でも、室内に侵入した蚊によって発症します。
治療と自宅でできるケア
治療の基本は、まず蚊に刺されない環境をつくることです。原因となる蚊から遠ざけるだけで、症状が軽くなっていくことも少なくありません。そのうえで、炎症やかゆみが強い場合には、動物病院で炎症を抑えるお薬(ステロイドなど)を使います。皮膚をかき壊して細菌感染を起こしている場合は、抗菌薬を併用することもあります。多くは、適切な治療と蚊を避ける対策で良くなっていきます。
ここで注意していただきたいのが、市販の虫刺され薬やかゆみ止めを、自己判断で塗らないでいただきたいということです。人用の塗り薬には、猫にとって安全性が確認されていない成分が含まれていることがあります。また、猫はからだをなめる習性があるため、塗った薬をなめ取って体調をくずす危険もあります。気になる症状があるときは、塗る前にまず動物病院へご相談ください。
なお「蚊を食べてしまったけれど大丈夫?」というご質問もよくいただきます。蚊を口にしたこと自体で大きな問題が起こることはまずありませんが、口の中を刺されて腫れたり、食欲が落ちたりする場合は念のためご相談ください。
予防のポイント
蚊アレルギーは、蚊に刺されないことがいちばんの予防になります。ご家庭では次のような工夫が効果的です。
- 室内飼いを基本にする:とくに蚊の活動が活発な夕方から夜は、外に出さないようにしましょう。
- 網戸や窓のすき間を見直す:小さなすき間からも蚊は入ってきます。網戸の破れやすき間がないか確認しましょう。
- 蚊の発生源をなくす:植木鉢の受け皿やベランダの水たまりなど、蚊がわく場所をこまめに片づけましょう。
- 殺虫剤・蚊取り製品は「猫に使ってよいか」を必ず確認する:人用の蚊よけスプレーを猫に直接使うのは避けてください。蚊取り製品を使う場合も、製品の表示を確認し、十分に換気をしましょう。猫に使える蚊よけは限られるため、迷ったら動物病院でご相談ください。
毎年同じ季節にくり返している子では、シーズンが始まる前から蚊対策を意識しておくと、症状を最小限に抑えやすくなります。
受診の目安
次のようなときは、早めに動物病院へご相談ください。
- 鼻すじや耳に、かさぶたやただれ、脱毛がある
- かゆがって患部をかき壊している
- 同じ季節に毎年、皮膚のトラブルをくり返す
蚊アレルギーは見た目がほかの皮膚病や腫瘍と似ていることがあり、自己判断は禁物です。早めに診てもらうことで、適切な治療と予防につなげられます。
まとめ
猫の蚊アレルギー(蚊刺咬性過敏症)は、蚊の唾液へのアレルギー反応によって、鼻すじや耳の先などに皮膚炎が出る病気です。室内飼いの猫でも発症することがあり、春から秋にくり返すのが特徴です。いちばんの対策は「蚊に刺されない環境づくり」。気になる症状があれば、市販薬を使う前に、まず動物病院へご相談ください。
毎年くり返す皮膚のトラブルも、原因がわかれば正しく備えることができます。「これってもしかして蚊アレルギー?」と気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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