2026/01/21
猫ちゃんは元来、泌尿器系のトラブルが非常に多い動物です。中でも「膀胱炎」は、年齢や性別を問わず多くの猫ちゃんが経験する病気ですが、その原因は単純な細菌感染だけではありません。
「寒くなるとおしっこが出なくなる」「何度も再発して治らない」と悩まれる飼い主様も多く、放置すると尿道が詰まり、短時間で命に関わる状態(尿毒症)に陥ることもあります。
本記事では、猫の膀胱炎の症状・原因から、病院での検査・治療の流れ、そして再発を防ぐための家庭でのケアまで、詳しく解説します。

1. これって膀胱炎?見逃してはいけない症状チェックリスト
猫ちゃんは痛みを我慢する習性があるため、初期段階では飼い主様が気づきにくいことがあります。しかし、トイレの行動には必ずサインが現れています。以下の症状が見られたら、様子を見ずに受診を検討してください。トイレの回数と量の変化(頻尿)
- 回数が増える: さっき行ったばかりなのに、数分〜数十分おきに何度もトイレに行く。
- 量が少ない: ポタポタと数滴しか出ない、またはトイレシーツや砂にほんの少ししか跡がつかない(テニスボール大だったのが、小銭サイズになるなど)。
尿の色や臭いの変化
- 血尿: おしっこがピンク色、赤色、あるいは濃い茶色になっている。
- 濁り・キラキラ: おしっこが白く濁っていたり、光を当てるとキラキラ光るもの(結晶)が混ざっていたりする。
- 臭いがきつい: 普段とは違う、鼻をつくような強いアンモニア臭や鉄サビのような臭いがする。
行動に現れる痛みのサイン
- 排尿痛: おしっこをする時に「ウー」「ニャー」と悲痛な声で鳴く。
- 姿勢の異常: 背中を丸めてじっと力んでいる時間が長い。
- 不適切な排泄(粗相): 布団、ソファ、部屋の隅など、トイレ以外の場所でおしっこをする。これは「トイレ=痛い場所」と学習してしまい、トイレを避けている可能性があります。
- 過剰なグルーミング: 下腹部や陰部を気にして、執拗に舐め続ける(舐めすぎてお腹の毛が薄くなることもあります)。
2. なぜなるの?猫の膀胱炎の3大原因を深掘り

猫の膀胱炎は、原因によって大きく3つのタイプに分けられます。治療法も異なるため、原因の特定が重要です。
① 特発性膀胱炎(ストレス性)
猫ちゃんの膀胱炎全体の約50〜60%を占める、最も多いタイプです。 検査をしても細菌や結石は見つかりません。原因は完全には解明されていませんが、神経系やホルモンバランスの乱れ、そして「ストレス」が大きく関与していると考えられています。
- よくあるストレス要因: 引っ越し、来客、工事の騒音、新しいペットの同居、トイレが汚れている、気に入らない、寒暖差など。
- 特に若い猫〜中年齢の猫に多く見られます。
② 尿石症(膀胱結石・結晶)
尿の中にミネラル成分が固まり、「砂(結晶)」や「石(結石)」ができる病気です。これらが膀胱の粘膜を傷つけて炎症を起こしたり、尿道を塞いだりします。
- ストルバイト結石: アルカリ性の尿でできやすい。食事療法で溶けることがあります。
- シュウ酸カルシウム結石: 酸性の尿でできやすい。溶けないため、外科手術が必要になることがあります。
- 原因: 食事内容、飲水量の不足、肥満、体質など。
③ 細菌性膀胱炎
尿道口から大腸菌やブドウ球菌などの細菌が侵入し、膀胱で繁殖して起こります。 若い健康な猫ちゃんでは比較的稀ですが、免疫力が低下している**高齢猫(10歳以上)**や、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症などの基礎疾患がある猫ちゃんで多く見られます。また、尿道が太く短い雌猫の方が少しかかりやすい傾向があります。
4. 猫の膀胱炎の治療法
お薬による内科療法
※特発性膀胱炎では内科治療を必要とせず、ストレス源への対応や飲水量を増やすことが特発性膀胱炎への対応法になります。
- 抗生剤: 細菌性膀胱炎の場合に使用します。感受性試験を行い、その細菌に効く薬を選定することもあります。
- 消炎鎮痛剤: 膀胱の炎症を抑え、排尿時の痛みを和らげます。
- 止血剤: 血尿がひどい場合に使用します。
- サプリメント: 膀胱の粘膜を保護する成分(グルコサミンなど)や、ストレスを緩和する成分が入ったものを使うこともあります。
食事療法(療法食)
尿石症や特発性膀胱炎の場合、食事の管理が治療の要となります。
- 尿のpHをコントロールして結石を溶かすフード
- ミネラル成分を調整して結石を作らせないフード
- ウェットフード:水分摂取に有効です。
- ストレスケア成分(トリプトファンなど)が配合されたフード ※市販の「下部尿路配慮」フードはあくまで予防用であり、治療には不十分な場合があります。必ず獣医師が処方する療法食を与えてください。
カテーテル処置・外科手術
尿道閉塞を起こしている場合は、麻酔をかけてカテーテル(細い管)を通し、詰まりを解消して尿を抜く処置が必要です。結石が大きすぎて詰まりを繰り返す場合は、手術で結石を取り出す、あるいは尿道を広げる手術(会陰尿道造瘻術)が必要になることもあります。
5. 自宅でできる採尿の方法
病院で正確な検査をするためには、できるだけ新鮮なおしっこが必要です。猫ちゃんを連れてくるのが難しい場合でも、おしっこだけ持参いただければ検査可能なことがあります。
- システムトイレの場合: 下のトレイにペットシーツを敷かず、溜まったおしっこをスポイトや醤油差しなどで採取してください。
- 固まる砂の場合: おしっこをしそうなタイミングで、お尻の下に浅いお皿やウロキャッチャー(採尿スポンジ)を差し入れて採取します。難しい場合は、ラップを砂の上に敷いてみるのも一つの手です。
※採尿後は、乾燥や変質を防ぐため密閉容器に入れ、できれば3時間以内にお持ちください。時間が経つと結晶ができたり細菌が増えたりして、正確な結果が出ないことがあります。
6. 自宅でできる猫の膀胱炎予防・ケア
猫ちゃんの膀胱炎は、一度治っても再発しやすい病気です。 治療が終わった後も油断せず、日頃の生活習慣を見直して「膀胱炎になりにくい環境」を作ってあげることが最大の予防策になります。
特に重要な3つのポイントをまとめました。
① 飲水量を増やして、おしっこを薄くする
排尿を促し、膀胱内の細菌や結晶の元となるミネラル成分を洗い流すためには、できるだけ水分摂取量を増やすことが最も効果的な予防法になります。
おしっこが濃くなると膀胱への刺激が強くなるため、「薄いおしっこをたくさんしてもらうこと」を目標に、以下のような工夫を取り入れてみましょう。
- 水飲み場を複数設ける: 1階と2階、寝床の近く、通り道など、猫ちゃんが「飲みたい」と思った時にすぐ飲めるよう、家のあちこちに設置します。
- 飲みやすい食器を選ぶ: ヒゲが縁に当たらない広い器や、高さのある器を好む子もいます。陶器、ガラス、ステンレスなど素材の好みも探ってみましょう。
- 給水器(循環式)を置く: 流れる水を好む猫ちゃんには、噴水タイプの自動給水器も有効です。
- 落ち着く場所に飲み水を置く: 人の出入りが激しい場所や、洗濯機の横などうるさい場所は避け、静かに飲める環境を用意します。
- 水の温度に配慮する: 特に冬場は冷たい水を嫌がることがあります。38度くらいのぬるま湯にすると、好んで飲むようになることがあります。
また、水分は飲み水だけでなくフードからも摂ることができます。 普段キャットフードを“カリカリ(ドライフード)”しか食べない場合、食事から水分を得ることが難しく、飲水量も不足しがちです。「あまり水を飲んでくれない」という猫ちゃんの場合、水分摂取のためにウェットフード(缶詰やパウチ)を取り入れるのも非常におすすめです。
ただし、ウェットフードはドライフードに比べて歯垢がつきやすくなる可能性があります。導入する場合は、歯磨きやお口のケアも同時に検討すると良いでしょう。
② トイレ環境を「最高」の状態にする
猫ちゃんはきれい好きな動物であり、トイレに対して非常に強いこだわりを持っています。「汚れている」「狭い」といった不満があると、排泄を我慢してしまい、膀胱炎のリスクが高まります。
猫ちゃんが気持ちよく排泄できるよう、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 常に清潔に保つ: 排泄物は可能な限りすぐに取り除きます。月に1回は砂を全交換し、トイレ容器自体を丸洗いしましょう。
- トイレの数を増やす: 理想的なトイレの数は「猫の頭数 + 1個」です。多頭飼いの場合は特に重要です。
- サイズを見直す: 猫の体長の1.5倍以上の大きさがあるトイレが理想です。狭いトイレでは無理な体勢になり、排泄しきれないことがあります。
- 砂の好みを優先する: 人間にとって便利な砂(香り付きや流せるタイプ)が、猫ちゃんにとっては不快なこともあります。一番リラックスして使える砂(一般的には鉱物系の細かい砂)を選んであげましょう。
③ ストレスの少ない生活環境を作る
原因不明の「特発性膀胱炎」の多くは、ストレスが引き金となって発症します。猫ちゃんは環境の変化に敏感ですので、心のケアも立派な予防になります。
- 安心できる隠れ家を作る: 来客時や大きな音がした時に、すぐに逃げ込める狭くて暗い場所(段ボール箱やキャットタワーのハウスなど)を用意します。
- 上下運動できる場所を作る: キャットタワーや家具の配置を工夫し、高い場所に登れるようにすることでストレス発散になります。
- 適度な運動とスキンシップ: 1日5分〜10分でも良いので、おもちゃを使って遊んであげましょう。運動不足による肥満も膀胱炎のリスク因子となるため、体重管理も兼ねて行うと効果的です。
7. まとめ:愛猫の「おしっこサイン」を見逃さないために
猫の膀胱炎は、単なる一時的な体調不良ではなく、「ストレス」「体質」「環境」といった複雑な要因が絡み合っている病気です。
特に猫ちゃんは痛みを隠すのが非常に上手な動物です。飼い主様が「あれ?何かおかしいな」と気づいた時には、すでに強い痛みを感じていたり、症状が進行していたりすることも少なくありません。
「こんな些細なことで相談してもいいのかな?」と迷う必要はありません。
愛猫のトイレの様子に少しでも違和感を感じたら、いつでもお気軽にご相談ください。

052-896-5556
