2026/09/29
ごはんを食べて、いつもどおり散歩に行く。そんな愛犬に健康診断が必要なのか、迷う飼い主様もいらっしゃると思います。
元気なときの健康診断にも意味があります。 まだ気づいていない病気を探すだけでなく、その子の普段の状態を記録し、食事や運動、お口のケアを見直す機会になるからです。研究でわかっていることと健診の限界を交えながら、その意義をお伝えします。

健康そうに見える犬でも、病気が見つかることがある
2025年に発表された海外の研究では、飼い主様が健康と考えていた高齢犬122頭に、問診・身体検査・血液検査・尿検査などを実施しました。その結果、初回の評価で24頭、約20%に少なくとも1つの病気が確認されました。
さらに、初回に健康と判断された98頭を対象とする2年間の追跡では、腫瘍や慢性腎臓病などが新たに診断されました。一度の健診で問題がなくても、その後の変化を継続して確認する意味があります。
ただし、これは高齢犬を対象とした結果であり、若い犬も含めた「すべての犬の5頭に1頭が病気」という意味ではありません。追跡中の診断には定期健診以外で見つかったものも含まれます。また、研究の定期検査は年1回で、半年ごとの健診の方がよいことや、健診による寿命延長を直接証明したものではありません。
この研究から伝えたいのは、「元気に見える」という日常の観察に、診察や検査を加えることで見えてくるものがあるということです。早く気づけば、追加検査や経過観察、治療が必要かを、症状が目立つ前に検討できます。
「うちの子の普段」を残しておく意義
検査結果が問題のない範囲だった場合も、その記録は次の診察に役立ちます。
健康診断結果に示される「基準範囲」は、多くの健康な犬の検査値をもとにした目安です。範囲内なら必ず健康、外れていれば必ず病気という境界線ではありません。検査の数値には個体差があるため、1回の数値だけでなく、その子の過去の数値からどう変化したかも判断材料になります。これは海外の診療ガイドラインでも重視されています。
体重や筋肉量も同じです。毎日一緒にいると気づきにくい変化を、前回の記録と比べて確かめられます。

健康診断では何を調べる?
健診の出発点は、飼い主様からのお話と、体を見て・触って・聴く診察です。そのうえで年齢や犬種、持病、診察での所見に合わせて検査を組み合わせます。
| 診察・検査 | 主に確認すること |
|---|---|
| 問診・身体検査 | 食欲や飲水、排泄、歩き方の変化。体重・筋肉量、お口、皮膚、しこり、心音など |
| 血液検査 | 貧血の有無、腎臓・肝臓に関連する数値、血糖など |
| 尿検査 | 尿の濃さ、蛋白・糖・血液成分など。血液検査と合わせた腎臓・尿路の評価 |
| 必要に応じた追加検査 | 血圧測定、レントゲン、超音波検査など。疑われる問題や犬種ごとのリスクを詳しく確認 |
血液検査だけで、すべての病気がわかるわけではありません。 お口の問題や歩き方の異常、触ってわかるしこりなど、身体検査が手がかりになる変化もあります。画像検査も、全員に同じ内容を行うのではなく、その子に必要な目的を考えて選びます。
お口のケアを見直す際には、歯を折らないガム・おもちゃの選び方も参考にしてください。
当院の健康診断コース
当院では、次の3つのコースをご用意しています。

| コース | 含まれる検査 |
|---|---|
| かんたん | 血液化学検査(腎臓・肝臓に関連する数値や血糖など) |
| 基本 | かんたんコース+血球計算(赤血球・白血球・血小板など)+電解質検査 |
| しっかり | 基本コース+レントゲン・腹部超音波・尿検査 |
尿検査がコースに含まれるのは「しっかり」です。 年齢や気になる変化、過去の検査結果に合わせて、どのコースがよいかご相談ください。
結果は報告書にまとめてお渡しします。比較できる過去の結果がある場合は、以前からの変化も確認しながらご説明します。
何歳から、どのくらいの頻度で受ける?
シニアになるまで待つ必要はありません。 若い頃から定期的に診察を受け、成長や生活に合った健康管理を相談しましょう。
当院では、7歳以上をシニア犬の目安とし、年2回(半年に1回)の健康診断をおすすめしています。 シニア期に入る前の成犬も、少なくとも年1回は健康状態を確認しましょう。
海外のガイドラインでも、シニア犬の診察は少なくとも6か月ごと、血液・尿検査は6〜12か月ごとが目安として示されています。
年齢の重ね方には犬種や体格による違いがあります。7歳という目安をもとに、その子の持病や過去の検査結果も踏まえて、健診で行う検査の内容や、より短い間隔での確認が必要かを相談して決めていきます。
異常値が出たら、すぐに治療が必要?
基準範囲を外れた数値があっても、それだけで病気が確定するわけではありません。変化の程度、体調、ほかの検査結果を合わせて、再検査するのか、詳しく調べるのか、経過を見るのかを判断します。逆に、結果が正常でも、すべての病気が否定できるわけではありません。
健診を「受けて終わり」にせず、結果の説明を聞き、次に何をするかまで確認することが大切です。

受診前に、日常の小さな変化をメモしておきましょう
「飲む水が増えた」「散歩で遅れる」「立ち上がりに時間がかかる」といった変化は、診察の大切な手がかりになります。食事やおやつ、使っている薬・サプリメントも伝えてください。歩き方などは自宅で撮った動画も参考になります。
すでに変化がある場合は、次の健診時期まで待たずにご相談ください。食事を抜く必要があるか、尿を持参するかは検査内容によるため、予約時に確認しましょう。
しばらく健診を受けていなくても、これからの記録を始められます。愛犬の年齢や暮らしに合わせて、無理なく続けられる健診の計画を一緒に考えていきましょう。
参考文献
- Marynissen S, et al. Exploring the Importance of Repeated Health Screening in Healthy Older Dogs. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2025;39(4):e70166.
- AAHA. 2019 Canine Life Stage Guidelines:Baseline Data.
- AAHA. 2019 Canine Life Stage Guidelines:Life Stage Checklists.
- AAHA. 2023 Senior Care Guidelines for Dogs and Cats:Diagnostic Tests and Recommended Frequencies.
- AAHA. 2023 Senior Care Guidelines for Dogs and Cats:Evaluating the Healthy Senior Pet.
この記事を書いた人 たいち動物病院 院長(獣医師) 名古屋市で犬猫の一般診療・トリミング・ペットホテルを行う、たいち動物病院の院長。地域の飼い主様とペットの毎日に寄り添う診療を心がけています。
愛犬の健康診断の時期や検査内容について、どうぞお気軽にご相談ください。
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