2026/05/14
外耳炎とは
外耳炎とは、耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起きた状態のことです。犬の外耳道はL字型に曲がった構造をしており、人間よりも奥が蒸れやすく、もともと外耳炎を起こしやすい形をしています。そのため犬は猫や人間と比べても、外耳炎にかかりやすい動物といえます。 軽症であれば耳垢が増える程度ですが、悪化すると外耳道の壁が厚くなって薬が届きにくくなったり、鼓膜が破れて中耳炎に進んだりすることもあります。「様子を見ているうちに悪化してしまった」というケースも少なくないので、早めに受診することが大切です。

まず、こんなサインに気づいたら受診を
- 耳を頻繁に掻く、床や壁にこすりつける
- しきりに頭を左右に振る
- 耳垢の量が増えた、色が濃い、においがある
- 耳を触ると嫌がる、痛がる
外耳炎の原因 PSPP分類について
外耳炎を繰り返すワンちゃんの診察でよくあるのが、「点耳薬でいったん治ったけど、またすぐ再発する」というパターンです。これは、表面に出ている炎症だけを治療して、根っこの原因に手をつけられていないことが多いためです。
獣医皮膚科では「PSPP分類」という考え方で原因を4つの視点から整理します。
主因(Primary)——外耳炎の“きっかけ“となる根本原因
ここが一番大切です。主因を治療しない限り、何度でも再発します。最も多いのはアレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)と脂漏性皮膚炎です。そのほか、耳ダニ、草の種などの異物、甲状腺やホルモンの異常が原因になることもあります。
脂漏性皮膚炎
副因(Secondary)——炎症に乗じて増える細菌や酵母菌
耳に炎症が起きると、もともと少量いる細菌やマラセチア(酵母菌の一種)が一気に増殖します。これが「ベタついた耳垢が出る」「くさいにおい」の正体です。副因だけを退治しても、主因が残っている限りまたすぐ増えてきます。
素因(Predisposing)——外耳炎になりやすい体質や環境
垂れ耳の犬種(コッカー・スパニエルやゴールデン・レトリーバーなど)は耳の中が蒸れやすく、菌が繁殖しやすい環境になっています。またシャンプー後の水分が残っていたり、耳の毛が密生している犬種も要注意です。
持続因(Perpetuating)——慢性化によって起きる耳道自体の変化
炎症が長く続くと、外耳道の壁が厚くなって内側が狭くなり、点耳薬が奥まで届きにくくなります。さらに悪化すると軟骨が石灰化して固くなったり、鼓膜が破れて中耳炎を引き起こしたりすることもあります。こうなると治療がかなり難しくなるため、早めに対処することが大切です。
検査——「何が原因か」を顕微鏡で確認します
耳垢検査(細胞診) 耳垢を少量採取して顕微鏡で見る検査です。診察室でその場すぐに結果がわかります。細菌が多いのか、マラセチアが多いのか、耳ダニがいるのかを確認して、それに合った薬を選びます。
ミミヒゼンダニ
細菌培養・感受性検査 「どの抗菌薬が効くか」を専門機関で調べる検査です。結果が出るまで5〜7日かかりますが、点耳薬を使っても改善しない場合や、耐性菌(薬が効きにくい細菌)が疑われる慢性例にはとても重要な検査です。「効くはずの薬が効かない」という事態を防ぐためにも、慢性化している場合はこの検査をお勧めすることがあります。
治療——点耳薬だけじゃないこともあります
耳道洗浄 耳道洗浄は外耳炎治療の基本です。耳道内の耳垢や微生物を物理的に取り除くことにより、外耳道の環境が良くなり点耳薬の効果を高める事ができます。
点耳薬 点耳薬も外耳炎治療の基本です。細胞診の結果に合わせて、抗菌薬・抗真菌薬・炎症を抑えるステロイドを含む製剤を使います。最近は1回の投与で効果が続く製剤もあり、毎日の点耳が難しいワンちゃんにも対応できるようになっています。ただし、鼓膜が破れている場合は使えない薬があるため、市販品を自己判断で使うのは避けてください。
内服薬 点耳薬だけでは対処しきれない重症例や中耳炎を併発している場合、あるいは背景のアレルギーを長期的に管理する場合に内服薬を組み合わせます。
耳道切除術(手術) 内科治療を十分に行っても改善が見込めない重度の慢性外耳炎では、外科手術が選択肢になります。外耳道の通気性を改善する手術から、外耳道を全て取り除く根治手術まで段階があります。「手術が必要かどうか」は、CT検査なども踏まえて獣医師とよく相談した上で決めていきます。
自宅でのケア——ここに気をつけてください
定期的な耳のチェック 週に1〜2回は耳をめくって、赤み、ニオイ、汚れがないかを確認しましょう。
耳掃除はやりすぎない 「きれいにしてあげたい」というお気持ちはよくわかるのですが、やりすぎると皮膚のバリアを傷つけて逆効果になることがあります。汚れが見える範囲だけ、犬用イヤークリーナーを含まえたコットンで優しく拭き取るようにしてください。綿棒は汚れを奥に押し込むため絶対に使用してはダメです。
まとめ
外耳炎は「よくある病気」だからこそ、しっかりと根本原因を探ることが大事です。表面の炎症だけを抑えても、主因であるアレルギーやホルモン異常が残っていれば必ずまた再発します。繰り返し外耳炎になっているワンちゃんは、根本原因の見直しを行い適切な治療によって愛犬が痒みから解放された健やかな毎日を送れるようサポートしてあげましょう。
週に一度、耳のにおいや耳垢の状態をチェックする習慣をつけていただくと、異変の早期発見につながります。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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