2025/12/04
犬アトピー性皮膚炎とは?
「最近、愛犬が体をしきりにかいている」「手足をずっと舐めている」「耳をよく振るようになった」
こうした変化は、日常の中で比較的気づかれやすいサインです。
犬アトピー性皮膚炎(Canine Atopic Dermatitis:CAD)は、犬にみられる代表的な皮膚炎の一つです。
特徴的なのは、かゆみが強く、繰り返しやすいことです。さらに、犬自身がかゆみに対して「なめる・引っかく・こする」動作を繰り返すことで皮膚が傷つき、炎症の悪化 → かゆみ → さらに掻くという悪循環が生まれてしまいます(イッチ・スクラッチ・サイクル)。
そのため、痒みの管理は犬アトピー性皮膚炎の治療においてとても重要になります。
犬アトピー性皮膚炎は 慢性的かつ再発しやすい 特徴があり、完全に治すことは難しい場合もありますが、適切な診断と治療によりコントロールすることが可能です。
主な症状
犬アトピー性皮膚炎では、強いかゆみや皮膚の炎症が特徴的です。代表的な症状は以下の通りです。
- 顔、耳、わきの下、内股、足先などに強いかゆみを訴えます。体をかいたり、なめたり、かじったりする行動が目立ちます。
- かゆみにより皮膚を掻き壊し、赤くただれてしまうことがあります。慢性化すると皮膚が厚くなったり、色素沈着を起こすこともあります。

耳のトラブル
- 外耳炎を繰り返す犬も多く、耳の中が赤くなったり、かゆみ・においが出ることがあります。

脱毛
- 掻いたりなめたりする行動が続くことで、毛が抜け落ちたり切れたりします。
- 常在菌のぶどう球菌やマラセチア(真菌)が繁殖し、膿皮症や皮膚炎を悪化させることがあります。
犬アトピー性皮膚炎の原因
犬アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因、皮膚バリアの乱れ、生活環境、アレルゲンへの感作などが相互に関係しあい皮膚炎を起こします。
- 遺伝的素因:柴犬、フレンチブルドッグ、トイプードル、シーズー、ミニチュアダックスフンド、チワワ、など
- 皮膚バリア機能の低下:皮膚バリア機能が低下することで、アレルゲンが侵入しやすくなる。
- 生活環境:室内飼育か屋外飼育か、都市部か郊外か、など
- 環境アレルゲン:ダニ、花粉、カビなど
これらが複合的に関与し、慢性的なかゆみや炎症を引き起こします。
治療法
犬アトピー性皮膚炎は「完治」よりも症状をコントロールして生活の質を上げることが目標です。複数の治療を組み合わせて行います。
- 薬物療法
- 抗炎症薬:ステロイド、シクロスポリン、JAK阻害薬などの薬を症状に合わせて使用することで皮膚の炎症や痒みを抑えます。
- 抗菌・抗真菌薬:二次感染がある場合に併用します。
- モノクローナル抗体製剤:痒みを抑えることに特化した注射薬です。他の治療で炎症をコントロールできた後の維持療法として使用します。
- 外用療法
- 抗炎症薬:炎症が限局している場合は外用薬だけで治療することもあります。炎症がひどい場合は飲み薬と併用します。
- 保湿剤:皮膚バリアを補い、乾燥を防ぎます。
- 免疫療法
長期的に有効な場合もあります。
ご家庭でできる犬のアトピー性皮膚炎ケア
- スキンケア
アトピー性皮膚炎の犬は、皮膚のバリア機能が低下しています。
皮膚を外部刺激から守るためには、清潔に保ち、乾燥を防ぐことがとても大切です。
- シャンプーのし過ぎは動物にとっても負担になります。
- 皮膚の炎症や脂っぽさの程度に応じて、シャンプーの種類を選択します
- 泡でやさしく洗い、10分ほど泡を置いてからよくすすぐと効果的です
- ドライヤーの熱の当てすぎは、皮膚を痛める原因になるので注意しましょう
- シャンプー後や日常的に、保湿スプレーやローションを使いましょう
- 特に乾燥しやすい季節(冬や冷暖房使用時)は、こまめに保湿をしましょう
- 栄養管理
- 動物性タンパク質・必須脂肪酸・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取
- 皮膚の健康維持にはオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が特に重要です
- 療法食やサプリを併用するのもおすすめ
- 除去食試験(特定のタンパク質源を避ける食事)を行うことがあります
- アレルギー用療法食は獣医師の指導のもとで行いましょう
まとめ
犬アトピー性皮膚炎は、 慢性的に付き合っていく皮膚病 です。原因は多岐にわたり、診断には時間がかかることもありますが、治療法の選択肢は年々広がってきています。
大切なのは、
- 早めに獣医師に相談すること
- 症状を記録して、変化を共有すること
- 治療を継続して生活の質を保つこと
飼い主さんと動物病院が一緒に取り組むことで、ワンちゃんが快適に暮らせるようサポートできます。

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